株式分割って得なの? NTTの25分割を経験して分かったこと
東京海上ホールディングスが1株を15株に分割すると発表しました。株式分割は「株が増える」とお得に見えますが、資産は1円も増えません。NTTの25分割を保有者として経験した私が、分割で本当に変わることと、勘違いしやすい点を整理します。
東京海上の15分割で、また分割が話題に
東京海上ホールディングス(8766)が、1株を15株に分割すると発表しました。2026年8月25日の発表で、基準日は9月30日、効力発生は10月1日です。
同時に、東京海上として初めての株主優待制度も導入されることが発表されました。分割と優待が同時に出たことで、かなり話題になっています。
なお、よく「東京海上日動」と呼ばれますが、上場しているのは東京海上ホールディングスです。東京海上日動火災保険はその子会社で、株式を直接買うことはできません。細かい話ですが、証券口座で銘柄を探すときに迷うので触れておきます。
そして株式分割と聞くと、私が今でも思い出すのがNTTの25分割です。
NTTの25分割は、正直インパクトがあった
私はNTT派で、最初に買った高配当株の1つがNTTでした。だから2023年の分割は、保有者として体験しています。
2023年7月1日、NTTは1株を25株に分割しました。
25分割です。15でも十分大きいのに、25。当時の最低投資額は40万円前後でしたが、分割後は2万円以下で買えるようになりました。
保有していた株数が、ある日いきなり25倍になる。画面を見たときの感覚は、今でも覚えています。「増えた」ように見えるけれど、実際には何も増えていない——この感覚が、株式分割を理解する出発点でした。
📖 NTTについて → 3大通信株、買うならどれ?
大前提:分割しても、資産は1円も増えない
ここが最重要なので、最初に書きます。
株式分割では、あなたの資産は増えません。
1万円札1枚を、千円札10枚に両替するのと同じです。枚数は増えますが、価値は1万円のまま。
NTTの例で見るとこうなります。
| 分割前 | 分割後 | |
|---|---|---|
| 保有株数 | 100株 | 2,500株 |
| 株価(イメージ) | 4,000円 | 160円 |
| 評価額 | 40万円 | 40万円 |
株数が25倍になり、株価が25分の1になる。掛け算の結果は同じです。
配当も同じ考え方です。1株あたりの配当は25分の1になりますが、持っている株数が25倍なので、受け取る配当の総額は変わりません。
「分割されたから得をした」というのは、基本的に勘違いです。
では、なぜ企業は分割するのか
資産が増えないなら、何のためにやるのか。
理由はほぼ1つで、個人株主を増やしたいからです。
日本株は原則100株単位で取引されます。株価が4,000円なら、買うのに40万円必要です。これは多くの人にとって、気軽に出せる金額ではありません。
株価を25分の1にすれば、同じ100株が1.6万円で買えます。買える人の数が一気に増えるわけです。
NTTが分割を実施したときも、投資しやすい環境を整えて株主層を広げることが目的として説明されていました。新NISAが始まる直前というタイミングも、明らかに意識されていたと思います。
今回の東京海上が分割と株主優待の新設を同時に発表したのも、狙いは同じ方向です。買いやすくして、個人に長く持ってもらいたい、という意思表示だと読めます。
買う側にとって、何が変わるのか
資産は増えませんが、買いやすさは確実に変わります。
① 100株単位で買えるようになる
これがいちばん大きい変化です。
日本株は100株から買うのが基本で、株主優待の条件も100株以上が主流です。分割で最低投資額が下がると、優待の権利を取れる人が増えます。
東京海上が分割と優待新設をセットで出したのは、まさにこの効果を狙ったものでしょう。
📖 優待の話 → 1株からもらえる株主優待の世界
② 少しずつ買い増せるようになる
株価が4,000円だと、買い増すたびに40万円動くことになります。株価160円なら、1.6万円ずつ買い増せる。
調整しやすくなるので、ポートフォリオを作るうえでは扱いやすくなります。
③ NISA枠を細かく使える
新NISAの成長投資枠は年240万円です。1銘柄40万円だと6銘柄で埋まってしまいますが、単価が下がれば枠の中で細かく組めるようになります。
勘違いしやすい3つのポイント
ここからは注意点です。
① 「分割されたから上がる」わけではない
分割の発表後に株価が上がることは、実際よくあります。今回の東京海上も発表後に買われました。
ただしこれは、分割そのものに価値があるからではありません。
- 買える人が増えるので、需要が増えるという期待
- 分割を発表できるのは業績に自信がある会社だという受け止め
- 優待新設などの他の好材料が同時に出ることが多い
つまり上がるとしても、分割が生み出した価値ではなく、期待によるものです。「分割するから買っておけば儲かる」という単純な話ではありません。
② 期中の分割は、配当の数字がややこしくなる
これは知らないと確実に驚く部分です。
東京海上は今回、配当予想を245円から130.67円へ修正しています。数字だけ見ると、ほぼ半減したように見えます。
でも実際は、分割前の基準に直すと245.05円で、わずかながら増額です。
なぜこうなるかというと、分割が期の途中で行われるからです。分割前に支払う配当は分割前の株数で、分割後に支払う配当は分割後の株数で計算されます。同じ1年の中に、基準の違う配当が混在するわけです。
大事なのは、1株あたりの配当額だけを見て減配だと判断しないことです。分割があった年は、必ず「分割前換算でいくらか」を確認してください。
③ 優待の条件は、変わることがある
分割すると、優待の条件が見直される場合があります。
分割後も「100株以上」のままなら、実質的に条件が大幅に緩くなります。逆に、必要株数が引き上げられることもあります。
私は以前、優待を当てにして買った銘柄で痛い目を見ているので、優待の条件変更には敏感になりました。分割のニュースを見たら、優待条件がどうなるかまで確認するようにしています。
📖 その失敗の話 → 優待廃止で株価が半値。それでも売れなかった私の失敗談
1株投資をしている私にこそ、分割は効く
ここは私のスタンスの話です。
株式分割は「100株そろえるのが大変な人のためのもの」と思われがちですが、私のように1株ずつ買っている人間にも、同じだけ効きます。
理由は単純で、1株の値段そのものが下がるからです。
NTTで見るとこうなります。
| 分割前 | 分割後 | |
|---|---|---|
| 100株買うのに必要な額 | 約40万円 | 約1.6万円 |
| 1株だけ買うのに必要な額 | 約4,000円 | 約160円 |
100株で買う人の負担が25分の1になるのと同じで、1株だけ試したい人の負担も25分の1になります。下がる倍率はまったく同じです。
私は「気になったらまず1株」というやり方をしています。目的は分散というより、買って持ってみないと、その会社を本気で見ないからです。
この観点で言うと、1株の単価が安いほど、気軽に試せます。
- 1株4,000円 → 「買うかどうか、少し考えよう」
- 1株160円 → 迷っている時間のほうがもったいない
同じ1万円でも、1株4,000円の銘柄なら2社しか試せません。1株160円なら、数十社を観察対象にできます。
私が150銘柄まで増やせているのは、単価の低い銘柄が買いやすいからという面が確実にあります。その意味で、分割は私にとってかなりありがたい出来事です。
📖 1株投資について → 単元未満株(かぶミニ)の始め方 📖 銘柄数の話 → 日本株150銘柄は分散しすぎ?
ただし、分割を「待つ」必要はない
恩恵は大きいと書きましたが、分割前に慌てて買う必要も、分割を待つ必要もありません。
分割前に4,000円分買っても、分割後に4,000円分買っても、手に入る価値は同じだからです。変わるのは「最小いくらから試せるか」という点だけ。
なのでこう考えています。
- その会社を持ちたいなら → 分割を気にせず、今買えばいい
- 少額で試してみたいだけなら → 分割後のほうが、より小さく試せる
NTTの25分割が今でも印象に残っているのは、数字のインパクトと、あれで実際に株主が大きく増えたという事実があるからです。分割は投資家個人を儲けさせるものではありませんが、その会社の株主構成を変える力はあります。
分割のニュースを見たときに、私が確認すること
まとめとして、実務的なチェックポイントを挙げておきます。
- 基準日はいつか — この日に株主でないと、分割の対象になりません
- 優待の条件は変わるか — 分割後の必要株数を確認する
- 配当は実質どうなるか — 分割前換算での金額を見る
- 同時に何が発表されたか — 優待新設や自社株買いなど、本命が別にあることも
東京海上の場合、基準日は9月30日です。ここまでに株主になっていれば分割の対象になりますが、分割を目的に慌てて買う必要はないというのが私の考えです。分割後に買っても、1株あたりの単価が下がるだけで、損得はありません。
📖 権利確定日の考え方 → 配当金はいつ振り込まれる?権利確定日を気にしない私のスケジュール感
まとめ
- 東京海上ホールディングスが1株→15株の分割を発表(基準日9月30日、効力発生10月1日)。初の株主優待も同時に導入
- NTTは2023年7月に1株→25株の分割を実施。最低投資額が40万円前後から2万円以下に
- 分割しても資産は1円も増えない。株数が増え、株価が同じ倍率で下がるだけ
- 配当も総額は変わらない(1株あたりは減るが株数が増える)
- 企業が分割する目的は、ほぼ個人株主を増やすこと
- 買う側のメリットは買いやすさ
- 100株単位で買える/少しずつ買い増せる/NISA枠を細かく使える
- 勘違いしやすい点
- 分割そのものが株価を上げるわけではない
- 期中分割は配当の数字が減ったように見える(分割前換算で確認を)
- 優待の条件が変わることがある
- 1株投資をしている人にも恩恵は大きい。1株の単価が下がるので、お試しで買う金額も同じ倍率で下がる
- ただし分割を待つ必要はない。価値は変わらず、変わるのは最小単位だけ
株式分割は、ニュースとしては派手ですが、持っている人の資産を増やすものではありません。慌てて権利を取りに行くより、その会社を長く持ちたいかどうかで判断すれば十分だと思っています 🌱
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