損益通算、私はほとんど使ったことがない|NISA中心で売らない投資家から見た税金の話
株の売却損を利益や配当と相殺できる「損益通算」と、損失を3年間繰り越せる「繰越控除」。便利な制度ですが、投資歴10年の私はほとんど使ったことがありません。NISA中心で、ほとんど売らないからです。なぜ関係がないのか、逆にどんな人には重要なのかを整理します。
正直、ほとんど気にしたことがない
投資の税金の話でよく出てくる言葉に、損益通算と繰越控除があります。
株で損をしたときに、その損を他の利益と相殺して、税金を減らせる仕組みです。うまく使えば節税になる、と紹介されることも多い制度です。
……ですが、正直に書きます。投資歴10年の私は、この制度をほとんど使ったことがありません。気にしたことも、ほぼありません。
理由は2つです。
- 投資のほとんどをNISAでやっている
- 買った株をほとんど売らない
この2つがそろうと、損益通算は使えないし、使う場面もない制度になります。
この記事では、なぜそうなるのかを説明したうえで、逆にどんな人にとっては重要な制度なのかを整理します。「自分には関係ない」と判断できるのも、仕組みを知っているからこそなので。
まず、損益通算とは
ざっくり言うと、同じ年の利益と損失を合算して、その合計に税金をかける仕組みです。
株の利益には20.315%の税金がかかります。ここで損益通算がないと、こういう不公平が起きます。
- A社の株を売って10万円の利益
- B社の株を売って10万円の損失
- トータルではプラスマイナスゼロ
合計では1円も儲かっていないのに、A社の利益10万円にだけ税金がかかると、約2万円を払うことになります。
損益通算を使えば、利益と損失を相殺して課税対象はゼロ。税金もゼロになります。
配当とも相殺できる
損益通算は、売却の利益同士だけの話ではありません。株の売却損は、配当とも相殺できます。
たとえばこういうケースです。
- 1年間で配当を5万円受け取った(すでに約1万円の税金が引かれている)
- 同じ年に、株を売って5万円の損失が出た
この場合、売却損と配当を通算すれば、配当から引かれていた税金が戻ってきます。
しかも、特定口座(源泉徴収あり)を使っていて、配当をその口座で受け取っていれば、この通算は証券会社が自動でやってくれます。年末に、払いすぎた税金が口座に戻ってくる形です。
ここで効いてくるのが、以前書いた配当金の受取方法です。配当を証券口座で受け取る株式数比例配分方式にしていないと、配当が口座の外に出てしまうので、この自動の通算が働きません。
📖 受取方法の話 → NISAなのに配当金から税金が引かれる?受取方式の設定を今すぐ確認して
通算しきれない損は、3年間繰り越せる
損失が大きくて、その年の利益や配当と相殺しきれなかった場合はどうなるか。
確定申告をすれば、翌年から3年間、損失を繰り越せます。これが繰越控除です。
- 今年、株で30万円の損失、利益は10万円
- 相殺しきれなかった20万円を翌年に繰り越す
- 翌年、20万円の利益が出たら、繰り越した損失と相殺して税金ゼロ
注意点が2つあります。
- 繰り越すには確定申告が必要です。証券会社は自動でやってくれません
- 繰り越している間は、取引がない年でも毎年申告し続ける必要があります
1年でも申告を忘れると、そこで繰越が途切れます。制度としては便利ですが、手間がかかるのも事実です。
私に関係ない理由①:NISAの損は、なかったことになる
ここからが本題です。
私が損益通算を使わない1つめの理由は、投資のほとんどがNISAだからです。
そして、ここがとても重要なポイントです。
NISA口座で出た損失は、損益通算も繰越控除もできません。
NISAの利益には税金がかかりません。その代わり、損失も「なかったもの」として扱われます。利益が非課税なら、損も税金の計算に入れない、という理屈です。
たとえば、
- NISA口座の株を売って10万円の損失
- 特定口座の株を売って10万円の利益
この場合、NISAの損は特定口座の利益と相殺できません。特定口座の10万円には、そのまま約2万円の税金がかかります。
つまり、投資のほとんどがNISAにある私は、そもそも通算する対象を持っていないわけです。
📖 NISAの使い方 → 新NISAの使い方
私に関係ない理由②:売らないので、損が確定しない
2つめの理由は、ほとんど売らないからです。
損益通算の対象になるのは、売って確定した損益です。株価が下がって含み損が出ていても、売らない限り、税金の計算上は何も起きていません。
私は「一度買ったら基本売らない」というスタンスで投資しています。だから、
- 売却益がほとんど出ない → 相殺したい利益がない
- 売却損もほとんど出ない → 相殺に使う損がない
通算するものが、そもそも発生していないのです。
以前、優待が廃止されて株価が半値になった銘柄を、売れずに持ち続けた話を書きました。あの株も、売っていないので損失は確定していません。良くも悪くも、税金の話にはなっていない状態です。
📖 売らない方針について → 高配当株に売り時はあるか
「NISAは損を通算できないから不利」は本当か
NISAのデメリットとして、損益通算ができないことがよく挙げられます。
たしかに、損が出たときだけを見れば不利です。課税口座なら取り戻せた税金が、NISAでは取り戻せません。
ただ、私はこれを大きなデメリットだとは感じていません。
理由は、NISAで長期保有する前提なら、損を確定させる場面自体が少ないからです。
- 損益通算がありがたいのは、損を確定させて売ったとき
- でも長期保有なら、損が出ている状態で売ることがそもそも少ない
- そして利益が出たときは、丸ごと非課税になる
損が出たときの小さな不利と、利益が出たときの大きな有利を比べると、長期で持つ人にとってはNISAのほうが明らかに得だと考えています。
もちろん、短期で売買を繰り返す人にとっては話が変わります。そこは次で書きます。
逆に、損益通算が重要になる人
私には関係の薄い制度ですが、こういう人にとっては知らないと損をする制度です。
① 課税口座で売買をする人
特定口座や一般口座で、株を売ったり買ったりする頻度が高い人です。
利益の出た銘柄と損の出た銘柄が同じ年に混在しやすいので、通算の恩恵が大きくなります。
② 複数の証券会社を使っている人
特定口座の中の通算は自動ですが、証券会社をまたいだ通算は自動ではやってくれません。
A証券で利益、B証券で損失、という場合は、自分で確定申告をしないと相殺されません。何もしなければ、A証券の利益に税金が引かれたままです。
③ 大きな含み損を抱えた株を、課税口座で売る人
課税口座で持っている株を、損切りとして売る場合です。
その年に他の利益や配当があれば通算でき、相殺しきれなければ繰り越せます。損切りの痛みを、税金の面で少し和らげられるわけです。
逆に、同じ損切りでもNISAの株なら、この救済はありません。
④ 課税口座で高配当株を持っている人
課税口座で配当を受け取りつつ、たまに株を売って損が出る人は、配当から引かれた税金が戻ってくる可能性があります。
このとき、先ほど書いた株式数比例配分方式になっているかどうかで、自動で戻るかどうかが変わります。
📖 課税口座と米国ETFの税金 → 米国ETFの分配金、二重課税と外国税額控除の話
「関係ない」と言えるのは、仕組みを知っているから
この記事のタイトルは「ほとんど使ったことがない」ですが、知らなくていいという意味ではありません。
私が損益通算を気にしなくていいのは、
- NISAの損は通算できないと知っていて
- 売らなければ損益は確定しないと知っていて
- そのうえでNISA中心・長期保有を選んでいる
からです。
仕組みを知らずに気にしていないのと、知ったうえで自分には不要だと判断しているのとでは、同じ「気にしない」でも意味が違います。
もし将来、課税口座での売買が増えたり、証券会社を増やしたりしたら、そのときはこの制度が必要になります。今の自分に関係ないことを確認しておく。それもひとつの使い方だと思っています。
まとめ
- 損益通算:同じ年の利益と損失を合算して、税金を計算する仕組み
- 株の売却損は、配当とも相殺できる
- 特定口座(源泉徴収あり)+株式数比例配分方式なら自動で通算
- 繰越控除:相殺しきれない損は、確定申告すれば3年間繰り越せる(毎年申告が必要)
- 私がほとんど使わない理由
- NISAの損失は、損益通算も繰越控除もできない(なかったものとして扱われる)
- ほとんど売らないので、損益が確定しない
- 「NISAは損を通算できないから不利」は、長期保有ならほぼ気にならない
- 逆に重要になるのは
- 課税口座で売買する人
- 複数の証券会社を使う人(通算には確定申告が必要)
- 課税口座で損切りする人
- 課税口座で高配当株を持つ人
税金の制度は、全部を使いこなす必要はありません。自分の投資スタイルに関係があるかどうかを判断できれば十分です。NISA中心で長く持つなら、損益通算はそっと頭の片隅に置いておくくらいでいいと思っています 🌱
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